よんばんめ。

雑多な女性向け二次創作文と呟き。

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作品傾向は、主に版権ものの男同士の友情で、たまに恋愛です。男女のこともあります。名前変換無しのドリーム小説なども置くこともあります
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管理人 閑原(しずはら)
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デル戦。シィスとシェラの出会い。原作突入編。

2009-12-15
それはシィスがこの国唯一の王女殿下の侍医となって暫く経ってからの出会いだった。

この頃のシィスは女官長始め王宮を取り仕切る面々とも漸く和やかに話すことができるまでに仲良くなり、門番の衛兵達もシィスの顔を見るなり挨拶をして丁寧に頭を下げ門を開ける。格好は相変わらず王宮には似付かわしくない市民の着る服だし、女官長や王を含め国の重鎮しか分からない男装のままだったが、別け隔てなく人当たりが良く気さくに接し、しかもあのじゃじゃ馬な王女を宥められる貴重な人物と言うこともあり比較的女官や兵達の評判も良いものである。
始めこそ王女の恋人でないかとの噂もまことしやかに囁かれたが、シィス本人が男性機能不全であり万が一にも王女に何かできるはずがないと堂々と公言して、畏れ多いが王女とは親友であると控え目に付け加えるものだから今ではそのような噂を囁くのは王女を妬む口さがない一部の貴族達だけだった。
男性機能不全とは良いな、とシィスの言葉を聞いたときこの国の王と王女は揃って腹を抱えたものである。シィスが女性である限り確かに間違っていないのだから嘘を吐いているわけでもない。ティレドン騎士団長等は今でも楽しげに人前でその事についてシィスを揶揄し花街に誘うほどだ。勿論、シィスが女である事は一言も言わずに、である。これではかえって何も知らない男性達からシィスは機能不全なんて可哀想なのにと同情され庇われる事になる。狙ってやっているのか、ティレドン騎士団長はその光景も実に愉快そうに見ていた。大方見当違いにシィスを慰める下っぱ騎士達とそれに困ったように眉を下げるシィスの様子が面白いのだろう。ティレドン騎士団長とシィスは概ねそういう仲だった。
そんな訳で、シィスが商売道具の医療機器一式を持って王女の離宮に向かうのを見て頭を下げ会釈するものはいても止めるものはいなかった。
シィス本人としては楽で良いが、平凡な生活からは程遠くなったなぁと遠い目をせざるをえない。

「―――シィス!」
「リィ、元気?」

しかし、シィスが幾ら平凡で平穏を願ったとしてもこの金色の友人がいるかぎりそれは叶わぬ願いである。
王の養女になりこの国の王女となった金色の友人、リィはシィスとの友人関係を止める気は更々無く、寧ろシィスを保護する立場につくと宣言してそれを確実に実行している。シィスもそれが嫌でないから、困ったものである。何だかんだで二人は仲の良い友人であるのだ。

「よく来たな、定期健診にはまだ日があるだろ?」
「理由なしに会いに来ちゃいけなかった?」
「大歓迎に決まってる。けど、その言い方はずるいぞ。理由がなかったら此処に来るのすら嫌がる癖に」

王宮嫌いで権力嫌いなリィに負けず劣らず、いや、しがらみや身分が無いだけリィ以上に城には近付かず、自然その中に住むリィにも理由が無ければ会いにこない薄情な友人にリィは拗ねたような顔を見せる。
ごめんごめん、とシィスは眉を下げて少し笑う。こうして、自分に会いたかったのだと素直に伝えられるのはシィスには面映ゆく擽ったいものだ。それがリィなら、本当に本心からの言葉だと知っているために尚更である。

「あのね、昨日姉さん達が珍しい食べ物をくれたんだ。甘くないし、お酒と合うからって勧めてくれたから、リィが気に入るかなと思ったんだけど…」

シィスの言う姉さん達とは、シィスがこちらの世界に来てから全面的に世話を焼きシィスを守ってくれた花街の女たちの事だ。心に深く傷を負ったシィスを受け入れ癒そうとしてくれ、そして実際少なからず癒してくれた人達をシィスは姉さんと呼び慕っている。
本当に、迷惑じゃなかった?と首をかしげこちらに問い掛ける友人にリィは迷惑な訳あるかと喜びを全身で表した。シィスが他人と関わるのを酷く苦手としているのをリィは知っている。その理由も。出会った時よりは遥かにマシになっているが、それでもやはり本心では未だ人間を忌避していることも。
だから、シィスにとってリィ特別な友人なのだ。何しろシィスにはリィが長い間狼にしか見えなかったのだ。今でこそ人間の形にも見えるが、初めは本当に金色の狼が喋っているようにしか見えなかった。
そして、リィにとってもシィスは特別な友人である。何故ならリィの事を本当の意味で狼だと認識した初めての人間だからだ。しかもリィのことを怖がりも利用も逃げることもせずに、至極当り前に受け入れて、綺麗だと、狼で良かったと言ってくれたのだ。
だからシィスは人間に対する恐怖心を抱かなくて良いリィに安心するし、リィはシィスを守ろうと決めているのだ。

「それなら今から酒の用意するか…っと、シィス、昼は食べたか?」
「いや、まだ。今日は急患が入ってね。その分夜は時間空けれたんだけど」

時間は昼過ぎよりも夕刻に近くなっている。食の細いシィスにリィは口を酸っぱくしてせめて三食食べろと言うのだが、急患ならば仕方がない。それがシィスの仕事であるし、患者を放ってまで食事できる性格ならばリィも普段から注意する必要はない。
肩を竦めて、なら酒の前に食事にするか、とリィはつい先日自分付きの侍女となった者を呼ぶ。
シィスが、またリィに侍女を付けるなんて女官長も懲りないなぁと苦笑する思いでいたが、主人に呼ばれて急いで現れた銀色の髪のその侍女を見た途端に、その瞳を見たその瞬間に、顔からは表情が消え宵闇の瞳が深くなる。
それはまるで人形のようで、昔のシィスだった。

「シェラ、こいつは俺付きの医者でシィスと言う。こいつも敬称を嫌うから様付きは勘弁してやってくれ」

いつの間にか帰ってきていたらしい王女に呼ばれて玄関口へと来たシェラは、深々とその王女の友人に対して頭を下げた。

「初めまして、シィス…様。この度、王女殿下の侍女となりこの宮で勤めさせていただく事と相成りましたシェラと申します」

完璧な挨拶だった。王女の言葉に躊躇いながら、やはり様を付けて丁寧に頭を下げるその侍女は完璧に新人らしい初々しさと精一杯さが見ている方に伝わるほど、完璧だった。完璧な、人形だった。
過去の己のように。

「…リィ」
一体、何のつもり?

絞りだした声は低く、シィスの瞳は混乱する侍女に向けられたまま、何かを写し取るように瞬いていた。

「…不快か?」

先ほどまで浮かべていた笑みも瞳に乗せていた感情の揺らめきも消え去ったシィスに、リィは恐る恐る聞いた。シェラは未だ完璧に侍女になりきり、王女のお客様の不審な様子に首をかしげて視線で主人に助けを求めていた。
何も、その瞳にも行動にも仕草にも心にすら、何もないというのに。何も、自分と言う一切が無くただ自分以外の何かに従うだけのもの。
何時かのシィスのように、師匠に出会う前のシィスのように、目の前にいるシェラもまた。

「どうなんだろう…ただ、違う、と、思う。僕は今相棒の目を借りれないから確実には分からないけど、それでも…これは、違うでしょ?これは…生きてないでしょう?」
―――これは僕でしょう?
「違う。今のお前は生きてる。生き始めてる。生きようとしている。だから、お前とこいつは違う。―――けど、昔のお前と、同じなのは確かだ」

深緑の煌めきが宵闇を照らす。金色の狼は少女がただ壊れないようにとその心を包むようにシィスの背に腕を回した。

「こいつは、シェラは俺の暗殺に来たんだ。ただ命令に従ってな。最初はどうしようかと思ったんだけど、見てたら昔のお前を思い出した。だから傍に置いておこうと思った」

リィの腕の中、ゆっくりとした優しい言葉を聞きながら、シィスは徐々にその瞳が宿し始めていた光を戻していく。リィの腕の中は心地よかった。リィの心遣いは嬉しかった。だから、大丈夫だった。シィスはもう人形ではない。心がある、人間だ。

「…うん、分かった。ありがとう、もう大丈夫だよ」

ゆっくりと身体を離して、微笑み。その微笑みを見て、リィも安堵と喜びに微笑んだ。
和やかな二人とは反対に、青ざめ強張った顔をしているのは途中までは大人しく二人を観察していたシェラである。この王女に自分が暗殺者だとばれ、一方的な賭けを持ちかけられたのはつい昨日のことだ。その間王女は誰にも言うつもりが無さそうだったので殺す対象は王女だけで済んだというのに、いま、この王女ははっきりとこの訪問者に向かって自分を暗殺者だと言った。
己の正体が知れたからには、消さなくてはならない。シェラは無意識に服の上から仕込んだ暗器を探った。

「シェラ、こいつへの手出しは俺が一切許さない―――破った時はお前の正体を王宮全員に知られると思え」

だが、首だけをシェラに向け爛々と瞳を輝かせる王女の顔は真剣で、ともすればこの場でその腰の剣を抜きかねない剣幕である。シェラは動きを止めて迷う。この場で王女共々二人を始末するか、いやしかし今のタイミングでは王女を確実には始末できない。気付かれずになど無理で、真正面からの対峙など有り得ないシェラにはその場合選択肢が無かった。

「リィ…今更だけど、君が僕にわざわざその子の前でその子の正体を明かさなければ良かった話じゃないかな」

均衡状態の二人の空気を苦笑しながらシィスがリィの肩を軽く叩いて一歩前に出ることで緩和する。勿論それだけで緊張を解く二人ではないが、リィの方は実力的にも段違いで上なのだから余裕は持てるはずだ。シィスと言う守る対象が傍に居たからの威嚇なのだ。

「シェラ、君がリィに何を言われたかは知らないけれど一度約束したなら破らないで欲しい。それに、暗殺は周りに知れると不味いのでしょう?僕はリィに何か言われないかぎり誰にも君のことは言わない。後は…そうだね、僕を人質にリィを脅すとかは止めたほうが良いよ。リィは人質を取った相手には容赦がないから」
「シィス、あんまり無防備に近づくなよ」
「この子の実力は僕より遥かに上なんだから、僕が警戒しても意味が無いでしょ」

身構えるシェラに話し掛けながらも少しずつ近づいてくるシィスに、リィは肩を竦めて諦め、シェラは怪訝な顔をして身構える。
と、三歩ほどの間をあけてシィスは止まった。それこそ、シェラにとっては一瞬で仕掛けられる間合いだった。近付いて分かったが、シィスはシェラよりも背が高いのでシェラは覗き込むようにこちらを見るシィスを見上げる形で観察する。
すると、今まで気が付かなかったことが不思議なくらいの不自然をシィスが身にまとっていることにシェラは気が付いた。それは一族として育てられたシェラだからこそ気付けた事。だからこそ今現在新人で一介の侍女としてなければならないシェラが口に出すことは有り得なかったが、シェラが気付いたその瞬間に相対してシェラの瞳を覗き込んでいたシィスはシェラが気付いたその事を悟って笑った。

「こっちに来てから一目で性別を分かられたのは初めてだよ」
やっぱり君もそうだからかな?

今度こそ、シェラは固まり侍女の仮面を剥ぎ取って目の前の人物に対して警戒を顕にした。シィスのすぐ後ろでリィが牽制していなければ瞬時に攻撃を仕掛けただろう。

「……何者だ、お前」
「名前はシィス。リィの友達で陛下からは侍医の地位を頂いてる。本業は今は休業してるから普段はシッサスの外れで町医者の真似事もしているよ」
初めまして、綺麗な綺麗な暗殺者くん。








――――――――――――――――――
シィスは少しづつ回復中。だけどリィが少しでも戦意を持ったり動物といると金色狼に見える。人間といると人間に見える。シェラは動く人形だから対人恐怖症は働かない。
この後シェラのことがあるからと西離宮に半ば無理矢理逗留することになるシィス。リィは確信犯。そして原作、と言うかリィの傍でリィに守られながら色々巻き込まれることに。



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